2023年2月26日日曜日

蝶野正洋の入場テーマ曲『クラッシュ』の歴史

先日2月21日東京ドーム大会で武藤敬司選手が引退試合を行いました。

闘魂三銃士のメンバーのうち、まだ正式に引退を表明していないのは”黒のカリスマ”蝶野正洋選手ただ1人ですが、武藤選手の計らいにより行われた”ボーナストラック”武藤vs蝶野が事実上最後の試合になりそうです。(主催のプロレスリング・ノア公式Twitterでも「全員引退」とツイート)




今回はそんな蝶野選手をフューチャーし、長年使用していた入場テーマ曲「クラッシュ」をテーマに取り扱っていきます。

題して『クラッシュ』の歴史。

曲としては有名だけど、意外と知られていないバージョン違いや使用遍歴を、改めて振り返っていこうと思います。


 



クラッシュあれこれ

「クラッシュ」の正式名称は「クラッシュ~戦慄~」。

そもそも「クラッシュ」はデンマークのネオクラ・HRバンド、ROYAL HUNTによる楽曲「Martial Arts」の別タイトル。「クラッシュ」は1ループ編集の都合で「Martial Arts」よりタイムコードが長いですが、演奏自体は同じ音源。


詳しく書くと
「Martial Arts」のタイムコードは1:51(CDでは1:52)
「クラッシュ」のタイムコードは2:58


「Martial Arts」0:00~1:19+「Martial Arts」0:11~1:50=「クラッシュ」
という等式になっています。  



「Martial Arts」が初めて世に出されたのが1992年に発表されたROYAL HUNTの1stアルバム『Land of Broken Hearts』の収録曲として。(日本やUSでは翌93年発売)

Land of Broken Hearts


その後、イメージ・ミニアルバムに「クラッシュ~戦慄~」というタイトルで収録されたのが「クラッシュ」としての初出。

なぜタイトルが変更になったかは不明です。どんな意図があったか、誰のアイディアなのか色々妄想すると面白いですね。

使用のキッカケに関しては、Wikipediaでは蝶野が海外滞在中にROYAL HUNTのメンバー、アンドレ・アンダーセンと知り合った縁で楽曲提供に繋がった・・・という記述がありますが元ソースは不明。

また意外かもしれませんが、蝶野選手が基本的に入場で使用している音源は「Martial Arts」で、元から1ループ編集が入っている「クラッシュ~戦慄~」は使用が確認されていません。


(以下文中では「Martial Arts」、「クラッシュ~戦慄~」も「クラッシュ」表記に統一しています)



初期


黒蝶野

1994年G1 CLIMAX後、これまでのコスチュームカラーだった白色から黒色にチェンジしたタイミング、所謂”武闘派宣言”から使用されたというのが通説。

「クラッシュ」の初使用は1994年9月G1 CLIMAX スペシャル金沢大会 vs 馳浩。
G1シリーズ後、8月シリーズ全休を経て、初めて”黒蝶野”スタイルに変貌を遂げた試合でした。

G1 CLIMAX スペシャル 蝶野 vs 馳



翌95年3月には前述の通り「クラッシュ」というタイトルのお披露目となったイメージ・ミニアルバム『蝶野正洋 21世紀への序曲』が発売されました。

蝶野正洋 21世紀への序曲




nwo時代

97年SGタッグリーグ蝶野・武藤組
1997年2月、1大ユニットとなるnWoジャパン始動にあわせて「クラッシュ」もマイナーチェンジ。
前奏にnWoサウンドロゴ加えたnwo仕様「クラッシュ」で入場することになります。


1998年にはnwoのテーマ曲アルバム「BLACK SYMPHONY」が発売。nwo仕様「クラッシュ」も前奏のnWoサウンドロゴを新録版に差し替えた「nWo Crash」というタイトルで収録。この「nWo Crash」は98年~99年の期間で藤波とのIWGP、98年のG1など蝶野選手の入場で使用されていました。
ちなみに「nWo Crash」発表以前まで使用されていた旧録nwoサウンドロゴは現在まで未商品化。幻の音源と化しています。

BLACK SYMPHONY


また1999年4月の東京ドーム大会、ハマーに乗って入場したvs大仁田ではデジロック感溢れるエレキギター演奏の君が代「君が代クラブミックス」を前奏に加えた君が代仕様「クラッシュ」を使用。

この君が代仕様「クラッシュ」は後にvsジョーニー・ローラー、vsハルク・ホーガンでの入場でも使用されています。


T-2000時代

2000年、nWoジャパンのお家騒動により新に立ち上げたユニット「T-2000」の総帥となった蝶野選手。それまで使用していた「nWo Crash」を封印、「クラッシュ」の新しい前奏としてDiddyの「No Way Out」、T-2000のイメージソング的位置付けだった「Victory(Nine Inch Nails Remix)」の台詞部分(意訳:「なにがやりたいんだコラ!」)をmixさせたT-2000仕様「クラッシュ」を使用することになります。


「No Way Out」0:00~0:20部分を使っています



「Victory(Nine Inch Nails Remix)」5:30~の台詞を引用しています


このT-2000仕様「クラッシュ」はT-2000消滅後も引き続き使用されており、現在まで続く蝶野選手の入場テーマ曲スタイルを確立させた存在となっています。

なお「Victory(Nine Inch Nails Remix)」はnWo時代から「ワールドプロレスリング」の蝶野選手のアイキャッチ等で使用されており、蝶野選手のイメージテーマ的側面も持ち合わせている気がします。


2002年、「HARD CRASH」

2002年12月、新日本プロレス入場曲CD『BATTLE CITY ~新たな超戦士ヒーロー~』が発売。「クラッシュ」を新録カバーしたHARD CRASH」が収録されました。

BATTLE CITY ~新たな超戦士ヒーロー~


このCD発売に先駆けて2002年11月トライアスロン・サバイバーシリーズで蝶野選手の入場テーマ曲も収録曲の「HARD CRASH」に変更。今まで前奏や編集の変更はあったものの、入場に使用していた「クラッシュ」音源そのものが変わるのは「クラッシュ」の使用遍歴上でも珍しい事です。(使用が確認されているのは2002年11月藤沢大会、天山・蝶野・藤波 vs魔界1号・柳澤・安田)

しかし何と約2ヶ月後の2003年の1.4東京ドーム大会ではT-2000仕様「クラッシュ」に戻します。
戻した理由は色々妄想はできるものの真相は闇の中。この1.4以降、「HARD CRASH」が陽の目を浴びることはなかった・・・

と言いたいところですが、6日後の1月のNOAH日本武道館大会に参戦した時には「HARD CRASH」が入場に使用されました。

「HARD CRASH」を使用したNOAH武道館 三沢・蝶野vs小橋・田上




2000年中期~新日後期


先述のようにT-2000消滅後もT-2000仕様「クラッシュ」が入場テーマ曲として使用されていましたが、周年大会や特別な試合においては例外的に特製仕様の「クラッシュ」を使用することになります。

2004年11月両国での20周年記念大会では、蝶野選手本人のクールなナレーションがmixされた君が代クラブミックス」前奏付きT-2000仕様「クラッシュ」(20周年仕様「クラッシュ」)を使用。

翌2005年は闘魂三銃士にして盟友だった橋本真也が急逝。
その直後となるG1 CLIMAXの優勝決定戦では、橋本の入場テーマ曲前奏をmixした破壊王仕様「クラッシュ」を使用し、会場ならびにテレビの視聴者を興奮のルツボに突き落としました。

橋本選手の入場テーマ曲前奏が収録された映画「TOYS」サントラ



25周年となった2009年10月両国大会では、歴代旧入場テーマ曲をメドレー形式で前奏に加えた25周年仕様「クラッシュ」を使用。メドレーで流れたのは
「Fantastic City '92」、「nwoサウンドロゴ」、「Victory(Nine Inch Nails Remix)」、「君が代クラブリミックス」、「No Way Out」の5曲。



新日退団、フリー、セミリタイア後 

2010年に新日本退団。フリーランスとして一時期は入場テーマ曲を蝶野選手本人のラップ曲「FIGHT&LOVE」を使用していましたが、結果的にT-2000仕様「クラッシュ」に戻します。
この頃にはお茶の間でも大晦日のTV番組「絶対に笑ってはいけない」シリーズの2007年から始まった人気コーナー『蝶野ビンタ』における蝶野出囃子BGMとして「クラッシュ」も浸透しており、入場テーマ曲を戻すのは自然な流れだったように思えます。

体調の問題から2014年以降は試合を行いませんでしたが、大会ゲストとして会場に登場する際は引き続き「クラッシュ」を使用。

2015年の新日本プロレスG1 CLIMAX 25にゲスト解説で登場した際は、第2回、第4回のG1を制覇した「Fantastic City '92」を前奏にした「Victory(Nine Inch Nails Remix)」台詞付きのG1ゲスト仕様「クラッシュ」という粋な仕様で入場しました。

2018年には武藤選手が主宰する大会「プロレスリング・マスターズ」に、2020年には”杉浦軍最高顧問”としてNOAHにゲストとして参加、この際もT-2000仕様「クラッシュ」で入場しました。
しかし新日時代に使っていたものと聞き比べると、マスターズで入場した版とNOAHで使用した版でそれぞれ微妙に編集が異なっており、再度mixし直していることが判明しています。



そして冒頭の武藤敬司引退大会、この大会でゲストに呼ばれた蝶野選手はT-2000仕様「クラッシュ」で入場しました。

この日が蝶野選手が現役として大会場に流れる最後の「クラッシュ」になるのでしょうか。それとも・・・

ここまで書いて↑の動画流れているのはFantastic City

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